ポルトガルの巨匠、ソウト・デ・モウラ氏が高松宮殿下記念世界文化賞建築部門で受賞

2025年、第36回「高松宮殿下記念世界文化賞(Praemium Imperiale)」が発表され、
建築部門ではポルトガルの建築家 エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ 氏が受賞されました。

このニュースは日本国内でも話題になりましたが、
そもそもこの賞は、日本が世界に誇る文化貢献の象徴ともいえる存在です。

そしてこの建築部門には、これまで日本人建築家も複数名が受賞しており、
その影響力は世界に広く知られています。

本記事では、高松宮殿下記念世界文化賞の概要とともに、
日本人建築家の受賞歴と功績、
そして、今回受賞したエドゥアルド・ソウト・デ・モウラ氏の代表作についてご紹介します

目次

高松宮殿下記念世界文化賞とは?

1988年、日本美術協会が創設した国際的な総合芸術賞であり、
以下の5つの部門において、世界的に卓越した芸術家に授与されます。

  • 絵画
  • 彫刻
  • 建築
  • 音楽
  • 演劇・映像

芸術分野の「ノーベル賞」とも称され、
国境や文化を超えて人類の精神文化に寄与した芸術家を対象としています。

毎年秋に発表・授賞式が行われ、世界中の注目を集めています。

エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ氏について

生い立ちと経歴

1952年にポルトガル北部・ポルトに生まれたソウト・デ・モウラ氏は、
ポルト大学で建築を学び、1974年に卒業。卒業後すぐに、
同じくポルトガルの巨匠アルヴァロ・シザの事務所でキャリアをスタートしました。

1980年に独立し、自身の設計事務所を開設。

以来、ポルトガル国内を中心に、ヨーロッパ全土にわたり数多くのプロジェクトを手がけてきました。

建築の特徴と評価

彼の建築の最大の特徴は、「土地の地形・歴史・素材」を最大限に活かした設計手法です。

派手な造形や奇抜なデザインに頼るのではなく、控えめで力強く、
空間の本質を際立たせるような建築を得意とします。

2000年代以降は国際的にも高く評価され、
2011年には「建築界のノーベル賞」と称されるプリツカー賞も受賞。

その際の受賞理由にも、「建築における節度、素材への深い洞察、地形との対話」が挙げられています。

ソウト・デ・モウラ氏の代表作は?

代表作①:ブラガ市立スタジアム(Estadio Municipal de Braga)

2004年の欧州選手権開催に向けて建設されたこのスタジアムは、
かつての採石場跡地に建てられたユニークな競技場です。

特徴

一方の側面は切り立った岩壁、もう一方は開放的な風景という
大胆な対比観客席の屋根は2枚の巨大なスチール製キャノピーで支えられ、
構造体そのものがランドスケープと融合

コンクリート、石、鋼という素材が、あたかも地形の一部のように見えます

この作品は、建築と地形との調和を高く評価され、
世界中の建築家たちの関心を集めました。

モウラ氏の「地形に建築を従わせる」のではなく、
「建築を地形に寄り添わせる」という思想が体現されています。

代表作②:ポーラ・レゴ美術館(Casa das Historias Paula Rego)

ポルトガル・カスカイスに2009年に完成した美術館。
国内外で活躍した女性画家ポーラ・レゴの作品を収蔵・展示しています。

特徴

赤いコンクリートによるピラミッド型の塔が並ぶ外観
建築とアートの「物語性」を融合させた空間

地元の素材(赤いピグメントを混ぜたコンクリート)を使用

この建物も「地域性」を重視した代表例であり、
美術作品と建築との呼応関係を巧みに設計しています。

その他の代表建築

Casa das Artes(カーザ・ダス・アルテス):ポルトガル文化施設として初期の名作。
シンプルな石造りで静謐な空間。

Burgo Tower(ブルゴ・タワー):ポルトに建つ高層複合ビル。鋼と石のコンビネーションが美しい。

高松宮殿下記念世界文化賞建築部門における日本人の栄誉

1993年受賞|丹下健三(Kenzo Tange)

戦後日本建築の象徴。

モダニズム建築を日本独自の空間思想と融合させ、
「代々木第一体育館」や「広島平和記念資料館」など、世界的名建築を多く残しました。

メタボリズム運動にも深く関与した偉大なる建築家です。

2009年受賞|磯崎新(Arata Isozaki)

建築界の思想家とも呼ばれる磯崎氏は、つくばセンタービルやロサンゼルス現代美術館など、
構造・空間・社会性を融合した建築を世界各地で展開しました。

2019年にはプリツカー賞も受賞という。

2010年受賞|伊東豊雄(Toyo Ito)

「せんだいメディアテーク」や「台中メトロポリタンオペラハウス」で知られ、
軽やかさ・柔らかさ・有機性を感じさせる空間設計が特徴。

震災後の「みんなの家」プロジェクトでも高く評価されました。

まとめ

「高松宮殿下記念世界文化賞」は、芸術が持つ力を世界に再認識させてくれる、貴重な文化的装置です。
日本からはこれまでに丹下健三氏、磯崎新氏、伊東豊雄氏という錚々たる建築家が受賞してきました。


そして、2025年にはポルトガルからエドゥアルド・ソウト・デ・モウラ氏が
新たにこのリストに名を連ねました。

それぞれの建築家が生み出す空間は異なりますが、
共通して「人」と「土地」に真摯であることが評価されている点は見逃せません。

これからもこの賞が、世界と日本の建築文化をつなぐ架け橋となることを期待しています。

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